8日、県議会行革特別委員会で「大企業優遇と大型投資事業優先の県政運営を見直し、そこから生み出される財源を活用し気候変動やコロナ禍によってその脆弱な部分を露にした、防災・減災対策、医療・保健・教育施策の充実、県民の福祉や暮らしが向上するための行財政運営を」!と、限られた短い時間でしたが意見開陳を行いました。
課題と検討方向について意見を申し上げます。
一つ目に産業立地条例の見直しを求めます。
「課題と検討方向」の見直しの視点には●社会変化の兆し、時代の変化等を踏まえ・・新たな課題等に的確に対応すること●他の地方公共団体の事業実施水準と比べ、著しく均衡を逸している事業について他団体の水準を基本に検討すること●最小の経費で最大の効果を発現すること。などが、挙げられています。産業立地条例についてそれぞれの視点から意見を申し上げます。
まず、社会変化の兆しについてです。2002年4月から施行された産業立地条例の目的は「産業の活性化と新たな雇用の創出を図り・・地域経済の振興に寄与することを目的とする」とあります。2008年のリーマンショックを受けて県内有効求人倍率は0.44倍まで低下しましたが、2017年には非正規雇用の求人が6割を占めるものの1.34倍まで回復しました。
一方で、現行の「ひょうご経済・雇用活性化プラン」では企業が抱える課題として「とりわけ中小企業における人手不足が深刻」とし、その中でも「製造部門」での人手不足が深刻に挙げられています。2020年度は34社の立地企業に対し約12億円の補助金が支出されましたが、そのほぼ全てが大手製造業です。県内の中小企業は著しい人口減少を背景に「製造部門で最も人出が不足している」ことを最重点課題としているのに、大手製造業ばかりを呼び込んでいるというわけです。さらに県が70億円、姫路市が80億円支出したパナソニック姫路工場では、開業前の事業計画書で新規地元雇用者100人と県へ報告していましたが、姫路市内に入った求人チラシでは100人全てが派遣社員での求人でした。姫路市に確認したところ「未だ地元からの正規雇用は確認されていない」ということです。
兵庫県の立地企業数は常に全国トップクラスですが2021年度兵庫県県民意識調査では県が設定した55の設問の内「働きやすい環境が整っていると思う人」「就職や転職がしやすい社会だと思う人」の割合がワーストスリーに並びました。
リーマンショック、コロナ禍を経験し、県民の意識は雇用の拡大から雇用の質へと変化し、人口減少が著しく進行する中で、とりわけ中小製造業では人手不足が最重要課題とまでなっています。条例施行から20年が経過し、見直しの視点にある「社会変化の顕著な兆し」に対応するためにも条例の見直しが必要です。
次に、見直しの視点では「他の地方公共団体の事業実施水準と比較して著しく均衡を逸している事業について他団体の水準を基本に検討」とあります。
ご存じの通り兵庫県産業立地条例は、県内に進出した企業に対し設備投資額の3%を補助金として支出するということになっています。要するに投資額に対する補助金の上限はないということです。上限のない補助金支出は全国の地方公共団体でも著しく均衡を逸しています。その結果、これまでに168社の立地企業に対し238億円の補助金が支出されましたが、そのうち半分以上の約130億円がパナソニック尼崎工場と姫路工場の1社に支出されました。
パナソニック社の内部留保額は2020年度には約1兆6千億円にもなっています。関西に本社置く企業の中で最も力のある企業にさらに130億円もの巨額の税を投入しているというわけです。日本では所得の再分配がされず先進国の中で唯一成長の止まった国となっています。兵庫県内のGDPも20兆円程度の横ばいで成長が止まったままです。破綻したトリクルダウン型の経済政策を改め、所得再分配機能を発揮させることこそが行政の果たすべき役割ではないでしょうか。他の地方公共団体の実施水準と比較しても著しく突出し、力のある大企業をさらに優遇する上限のない補助金支出は見直すべきです。
次に、見直しの視点では「最小の経費で最大の効果を発現させる」とあります。
姫路市包括外部監査は、パナソニック姫路工場の立地後、補助金の支出が企業の投資動向にどのような影響を与えたかについての検証を姫路市に求めました。その結果大企業においては、投資先の決定要因として「道路、港湾、工業用水などが充実している」ことが、トップに挙げられました。また先日の質疑で県当局が答弁されましたが経済産業省の調査でも「本社や流通業等との近接性」がトップに挙がっています。つまり、巨額の補助金支出が、大企業の投資動向に決定的影響を与えたとは言えないということです。これでは見直しの視点にある「最小の経費で最大の効果の発現」ということにはなりません、この点からも、本条例の見直しを求めます。
二つ目に普通建設事業費についてです。
「課題と検討方向について」では、投資事業の見直しについて「地方財政計画の水準へ・・投資事業規模を検討」「大型投資事業については、事業計画や事業実施について検討」とあります。
本県の当初予算と地財計画は同水準にありますが、決算ベースにすると地財計画・当初予算との乖離幅が拡大傾向にあります。この乖離は主に補正予算や別枠事業によるものですが、補正予算は必用に迫られて編成されるもので、その多くが別枠事業も含めて昨今の気候変動に対応するための防災・減災事業に充てられています。ここを削減すべきではありません。
見直すべきは、見直しの視点にもある不要不急の大型投資事業です。
2020年度の補助・別枠事業では727億円の補正予算編成がされましたがその内の約73億円1割が防災・減災の名のもと不要不急の基幹8連携軸の整備に充てられました。
また、県は播磨臨海地域道路計画について、国から意見照会を受け「県は播但連絡道路から広畑までの西側区間の整備を行ってまいります」と、回答しています。つまり、総額6000億円とも7000億円ともいわれる国庫事業である超大型投資事業の約3分の1の区間を県独自で整備するということです。財政状況が極めて厳しい中で、本気でこのようなことを考えているのでしょうか?
普通建設事業費については、わが党県議団がこれまで具体的に問題点を指摘してきた不要不急の空港、港湾、基幹8連携軸整備などの大型投資事業こそ見直し、地域の安全安心のための道路改良事業や、気候変動に対応する防災・減災事業こそ維持・拡充すべきです。
三つ目に、コロナ禍を踏まえた医療・保健・教育体制等の拡充と、県民サービスの向上を求めて意見を申し上げます。
コロナ禍を通じて、常にギリギリの体制、効率を最優先にしてきた社会の見直しが求められています。しかし「課題と検討方向について」では、そうした視点が見られません。
コロナ禍以前に策定された「公立病院改革ガイドライン」に基づき、コロナ禍で最もその役割を発揮した公立病院の統合再編を進めようとしています。また、コロナ禍でもっとも不足した急性期病床を削減する「地域医療構想」はパンデミックが全く想定されていない構想になっているにも関わらず引き続き位置づけられています。
また、コロナ禍のもとで「地域の保健所、身近な保健師」がこれほど求められたことはありません。それにもかかわらず、芦屋保健所と宝塚保健所の統廃合議論の前提となっている、阪神南県民センターと阪神北県民局の統廃合についても推進することが位置づけられています。
学校教育については、コロナ禍を踏まえ教室内でのソーシャルディスタンス、子どもたちへの丁寧な教育が求められています。知事は公約として30人学級を掲げましたが「課題と検討方向」には30人数学級への検討が全くありません。知事は常々オープンな県政と言われていますが、本会議のわが党の答弁に対し少人数学級の実施について「難しい」と答弁されましたが、先日の質疑で教育次長は「知事との協議の中では30人学級について直接話をしているわけではない」と、答弁されました。知事は財政のプロですから、30人学級の実施は財政的に難しいとわかった上で、それでも実施できると判断した上で公約に掲げられたはずです。いったいどこで議論がされて「難しい」となったのですか?先ほど申し上げた毎年10億円を越える大企業優遇の企業立地補助金を見直せば十分に財源は確保できるのではないですか?行財政構造改革特別委員会の中で県民にオープンな形で検討することを求めます
またコロナ禍も相まって県民所得が低迷するもとで「低廉な家賃で住宅を賃貸する」という県営住宅の役割がますます求められている中での管理戸数削減計画は見直すべきです。古くなった県営住宅は建て替えや大規模修繕を積極的に行い、県民が住みたくなる魅力ある県営住宅への改善努力こそ必要です。
次に「民間活力を活かした管理運営の推進」とありますが、民間活力を大義名分に実質は人件費抑制が目的化した公の施設の民間委託が多くみられます。委託先の雇用契約は非正規雇用が大半で、その多くが本格的・恒常的業務に従事しているにも関わらず「5年で雇止め」の新たな規則を設けた雇用契約となっています。人件費抑制が目的化しつつある安易な民間委託はやめるべきです。
最後に、これまでの大企業優遇と大型投資事業優先の県政運営を見直し、そこから生み出される財源を活用し気候変動やコロナ禍によってその脆弱な部分を露にした、防災・減災対策、医療・保健・教育施策の充実、県民の福祉や暮らしが向上するための行財政運営を求めます。